粉飾決算に対する取締役の責任
2014-08-29
よく会社を設立するときに、話題となるもののうちの一つに、
「会社の役員・取締役となると、どんな責任があるのだろう?」
ということがあります。
とりわけ損害賠償的なことを気にされる方が多いようです。
よって、今回は粉飾決算をした場合の取締役の責任を記載してみます。
【1】粉飾決算とは
人為的に決算書の数字を操作(粉飾)した決算を組むことです。
粉飾は、主に利益を過大に見せるために行われます。利益を過大に見せることで、
会社あるいは経営者の信用失墜を防ごうとするわけです。
また、税金逃れのために利益を過小に見せる場合があります。
これを逆粉飾といいます。
【2】会社法の規定 (会社法第429条一部抜粋)
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第429条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、
当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 取締役及び執行役が、次に定める行為をしたときも、
前項と同様とする。
ただし、その者が当該行為をすることについて
注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の
募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知
又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類
に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
・・・・・ここが粉飾決算についての記述です。
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第440条第3項に規定する措置を含む。)
【3】民事責任
(1)会社に対する損害賠償責任
取締役が粉飾決算に基づき違法に配当を行った場合や仮装経理により
納税額が過大になった場合等、会社に損害を与えたときは、
取締役は会社に対し連帯して損害を賠償すべき責任を負います。
(2)第三者に対する損害賠償責任
粉飾決算に基づき借入を行い、その後債務不履行になるなど
第三者に損害が生じたときは,第三者に対して連帯してその損害を
賠償すべき責任を負います。尚、虚偽の計算書類を作成
した当事者は、他の取締役に比べ責任を加重されています。
【4】刑事責任
(1)違法配当
粉飾決算に基づき配当を行った事により、会社財産を棄損した場合は、
『会社財産を危うくする罪』(刑事罰)に問われます。
(2)虚偽文書行使等の罪
粉飾決算に基づく計算書類により新株募集等を行った
場合、『虚偽文書行使等の罪』(刑事罰)に問われます。
(3)特別背任罪
取締役が背任行為を行った場合には、通常の背任罪より重い
特別背任罪となります。
【5】まとめ
以上の様に会社の経営を担う取締役は、重大な責任を
負っています。
中小企業の場合は、代表取締役である社長について
会社としての活動と個人としての活動、
または会社と個人のサイフが混同されてしまうことが多々見受けられます。
気をつけるべき点は公私混同です。
経営上の判断基準とお金の流れをきちんと区分することが肝心です。
その上で毎月試算表を作製して内容を確認すれば、問題点がある場合
早急な洗い出しが出来るでしょう。